○参考人(中島俊朗君) 御紹介いただきました中島でございます。
本日は、弊社、日本CCS調査が行ってまいりました実証事業の概要を御説明させていただいた後、本法案に関する若干の意見を申し述べさせていただきたく存じます。
お手元に資料をお配りさせていただいておりますので、そちらを御覧いただきたいと思います。
表紙をめくっていただきまして、二ページを御覧ください。
日本CCS調査株式会社は、二〇〇八年、CCSを推進する国の方針に呼応した民間企業の出資により設立されました。同じ年には、G8洞爺湖サミットでCCSの重要性について確認がなされております。日本のエネルギー関連企業、電力会社、都市ガス会社、石油精製、石油・天然ガス開発、プラントエンジニアリング会社、総合商社等、三十三社の民間企業の出資をいただいております。
弊社は、苫小牧CCUS大規模実証のほか、貯留適地の調査、液化CO2の船舶輸送実証等を国などから委託を受けて実施をしております。こうした取組は、二〇一五年のCOP21におけるパリ合意のその大分前から、約十六年間にわたり地道に継続をしてまいってまいりました。
次のページを御覧ください。
三ページには苫小牧実証での目的を記載してございます。この四点、すなわち、分離回収から貯留までの一貫システムとして安全、安心なシステムであることの実証、それから情報公開と地元理解の醸成、技術の習得を目的として実施をしております。
ここに記載はございませんけれども、二〇一二年から一五年度の四年間を準備期間といたしまして、設備の設計、建設、坑井の掘削作業等を行いまして、二〇一六年四月よりCO2の圧入を開始、一九年の十一月に予定した三十万トンの貯留を達成いたし、その後は稼働を休止してございます。二〇一九年十一月以降現在まで、圧入したCO2のモニタリングを継続あるいは設備の保全等を実施しております。
四ページを御覧ください。
こちらの上段の図に示しておりますとおり、本実証では、隣接する製油所内の水素製造装置のオフガスの一部を受け取りまして、そこからCO2を分離回収し、地下に貯留しております。
続いて、五ページを御覧いただきますと、地下の部分を拡大した図になっております。
地下の地質構造と圧入坑井の関係でございますけれども、海底から約一千から三千メートルの深度に存在する貯留層にCO2を圧入しておりますが、貯留層の上部には液体や気体を通さない緻密な遮蔽層が厚く存在しており、一旦地下に貯留したCO2が再び海中や地上に漏出するリスクは極めて小さいと評価をしてございます。
六ページを御覧ください。
実証設備の位置をお示しした写真でございます。実証センターや圧入地点が、人口約十七万人の苫小牧市街地のごく近傍に位置することが見て取れるかと存じます。観測井や海底地震計を設置するなど、しっかりしたモニタリング体制と情報公開を徹底したこと、積極的かつ地道な広報活動を実施したことにより、地元市民や関係者の御理解を得ながら円滑に作業を進めることができました。
七ページを御覧ください。
圧入期間中であった二〇一八年九月に北海道胆振東部地震が発生いたしました。本実証センターは震度五弱を観測いたしましたが、CO2の地下からの漏出等は確認されず、地震の専門家にも御検討いただき、本実証が地震の発生原因としても、また発生した地震による貯留層や坑井への影響についても、共に因果関係がないことを確認しております。
八ページを御覧ください。
ページの一番下のところに青いハッチが掛かった部分でございますけれども、本実証は海洋汚染防止法の適用を受けて実施いたしましたが、同法には地下の地質構造の利用に関する権利義務や技術基準についての規定がなく、坑井の掘削や貯留等の作業は、経済産業省のガイドラインに従い、鉱業法、鉱山保安法に準拠して実施をいたしました。今後、民間事業者によるCCSの社会実装を推進するに際しましては、一元的な法律の整備が必須であると考えてございます。
九ページを御覧ください。
苫小牧での実証規模は、年間十万トン、合計で三十万トンの圧入でございましたが、そのデータを基にいたしまして、実用化で想定される規模として、年間百万トンのCO2圧入にスケールアップした場合のコストを試算してございますが、その結果といたしまして、圧入量ベースでは六千百八十六円、分離回収や圧入に要したエネルギーの利用によるCO2の排出量を考慮した実質削減量ベースでも七千二百六十一円パー・トンという結果となっております。
なお、苫小牧実証では、CO2の分離回収地点と圧入地点がごく近接しておりましたために、CO2の輸送コストはほとんど含まれておりません。
それから、中段でございますけれども、政府のCCS長期ロードマップでは、RITE、地球環境産業技術研究機構さんが一定の条件下で行った試算を踏まえ、二〇五〇年におけるコスト目標を設定し、CCS全体で二〇二三年比約六割以下を見込むとされておりますけれども、この左から二列目、足元という欄に記載の想定コスト水準は、今申し上げました弊社の試算の想定規模との違いあるいは苫小牧実証以降の物価上昇等を勘案いたしますと、おおむね妥当な水準ではないかと考えているところでございます。
他方、一番下の段でございますが、各国の炭素税等の水準は徐々に上昇する傾向にございますけれども、欧州における炭素排出権取引価格、EUETSの推移を見ますと、制度の強化もございまして、二〇二一年度頃より八十から九十ユーロの水準に上昇しております。足下ではウクライナ情勢等あり乱高下している状況もございますが、円換算いたしますと、さきに申し上げましたCCSのコストの水準に近づく傾向にあると受け止めております。
十ページを御覧ください。
苫小牧の実証は海外からも高い評価をいただいております。二〇二一年には、欧州最大のCCS国際会議であるトロンハイム国際会議で最優秀論文賞を受賞、二二年には、多国間CCSイニシアティブであるCSLFからグローバルアチーブメント賞を受賞、二〇二二年には、国際エネルギー機関、IEAが発刊したCCUSハンドブックの中で、地震多発地域でのCO2貯留の好事例であるとの御評価をいただいております。
また、右下のグラフですが、苫小牧実証センターでは、海外の政府機関、政府あるいは研究機関等からの多数の視察を受け入れております。二〇二三年単年で見ましても、海外からのみで三十九件、五百五十五名の御視察をいただいており、うち、アジア諸国、タイ、中国、韓国、台湾、マレーシア、シンガポール及び中東などからの視察者がその八割を占め、これらの国々でのCCSに対する関心の高さを感じているところでございます。
十一ページを御覧ください。
ここまで御説明いたしましたとおり、苫小牧実証は、所期の四つの目的をしっかりと達成できたものと認識しておりますが、本実証から得られた社会実装に向けた課題として、大きく四点、コストの低減、輸送手段の確立、貯留適地の確保、事業環境の整備といった点が認識されました。
このうち、コスト削減については、特に分離回収における技術開発が期待されること、輸送手段、貯留適地調査につきましては、次のページ以下で御説明する取組が進行中でございますこと、そして、事業環境整備につきましては、まさに本法案により法整備が行われようとしており、加えて、CCSを事業として行える経済的な枠組みの整備が必要であろうと認識しております。
十二ページを御覧ください。
話が若干変わりますが、二〇〇五年から一二年頃に行われましたRITEさんなどによる概査を受けまして、二〇一四年から二三年度まで、日本周辺のCO2貯留ポテンシャル調査を弊社が実施いたしております。その結果として、十一地点、百六十億トンのポテンシャルが存在すると推定しております。まだ未調査の地域も残されておりますことから、日本全体の年間排出量約十一億トンのうち、仮に一億トンを毎年貯留し続けるとしても、相当の貯留キャパシティーが存在する可能性があると考えております。
十三ページを御覧ください。
大規模な排出源、集積地域の近傍に貯留適地が見付からない場合、CO2の長距離輸送手段が必要となるため、液化CO2船舶輸送実証を弊社が受託をし、現在必要な設備の建設等を進めているところでございます。本実証の一環として、CO2タンクの大型化を目指し、世界初となる低温、低圧状態での運用が可能なCO2輸送船「えくすくぅる号」が建造され、既に竣工しており、今年度より本格的な実証運用を開始する予定でございます。
最後のページ、十四ページになります。
以上、御説明申し上げましたとおり、CCSに関わる技術研究開発は、コスト削減等の課題はございますものの着実に進展しております。カーボンニュートラルと我が国のエネルギー安定供給、安全保障との両立におきましては、化石資源を利用しながらCCS、CCUSの活用を図ることが必要と考えておりますし、CCSは、先ほど辻先生のお話もありましたとおり、バイオマス発電との組合せによるBECCS、あるいは大気からの直接回収と組み合わせたDACCSといったネガティブエミッションの実現にも必要な技術でございます。
海外においても、CCSへの取組は加速をしており、我が国で更なる実績を積み上げ、海外に伍してCCSの社会実装を進めるには、我が国の石油・天然ガス鉱業者等の貯留事業者の参入を促進すべく、早期の法整備が必要であると考えております。本法案は、技術的親和性の高い石油・天然ガス鉱業、かねへん鉱業のプラクティス、例えば、地域の理解、環境対応等や苫小牧実証等から得られた知見が適切に反映されているものと認識しております。
他方で、事業としての予見可能性を高めるためには、モニタリングを含む諸規制について、国際標準と比較して過度なコストが発生しないよう留意が必要であると考えております。
加えまして、本法案が成立した後の課題といたしまして、二〇三〇年までの貯留開始を実現するためには、最終投資決定を行う必要が生じる二〇二六年頃までに貯留事業等を成立させる経済的枠組みを早急に立ち上げ、国による全面的な支援措置をまとめていただくことが極めて必要であると考えております。
また、当社が地質学等の有識者の御指導の下で進めてまいりました適地調査、貯留適地調査により、十一地点で百六十億トンが確認されておりますが、引き続き調査を進めていく必要があると認識してございます。さらに、コストダウンに向けて研究開発等を促進することも必要であると考えてございます。
私からは以上でございます。どうもありがとうございました。
中島俊朗 の他の発言
2024-05-07 · 参議院経済産業委員会
○参考人(中島俊朗君) お答え申し上げます。
まず、知見を活用していただくことは十分に可能であろうと思います。苫小牧実証で実施したそのモニタリングの中には、地下の温度、圧力の計…
2024-05-07 · 参議院経済産業委員会
○参考人(中島俊朗君) お答え申し上げます。
今、辻先生おっしゃったこと以外のところで少し申し上げたいと思いますけど、基本的にといいますか、そのCCSに対する批判としては、やは…
2024-05-07 · 参議院経済産業委員会
○参考人(中島俊朗君) お答え申し上げます。
非常に難しい御質問であると思っております。
基本的に、CCSが成立するためには、CO2のチェーンが全体で結び付く必要があるとい…
2024-05-07 · 参議院経済産業委員会
○参考人(中島俊朗君) お答え申し上げます。
やはり現時点で認証制度と、モニタリングに関する認証制度というものはないというふうに認識をしてございます。
今、辻先生からお話が…
2024-05-07 · 参議院経済産業委員会
○参考人(中島俊朗君) 御回答申し上げます。
まず、パイプラインの事故といいますか、高濃度のCO2を輸送等で取り扱うことのリスクについてでございます。
もちろん、これで漏え…
2024-05-07 · 参議院経済産業委員会
○参考人(中島俊朗君) お答えいたします。
辻先生からもお話ありましたけれども、まずは事前にサイトスクリーニングの段階で、危険な地域、大きな断層がある地域であるとか、それから地…
2024-05-07 · 参議院経済産業委員会
○参考人(中島俊朗君) お答えいたします。
まず、規模のところから先に申し上げます。
これは、特定の規模、幾ら以上であればということでは必ずしもないと思いますけれども、基本…
2024-05-07 · 参議院経済産業委員会
○参考人(中島俊朗君) お答えいたします。
まず、私も、JCCSが実証するに際しましては、まさにそのCCSというものが何かということを一からといいますか、ゼロから皆さんに理解し…
API / MCP 利用
国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=中島俊朗
MCP: search_diet_speeches(speaker="中島俊朗")