SEISAKU DB トップ
SEISAKU DB
加藤孝明 ·東京大学生産技術研究所教授/東京大学社会科学研究所特任教授

衆議院東日本大震災復興・防災・災害対策に関する特別委員会(2025-05-22)での発言

第217回国会 ·第第10号号 ·5,002字
○加藤参考人 東京大学の加藤です。  まず、今の重川先生のお話が心に刺さりました。ありがとうございます。  まず、簡単に自己紹介させていただきたいと思います。  今、東京大学の生産技術研究所、これは理科系の研究所です。それからもう一つ、社会科学研究所、これは文科系の研究所です。文科系、理科系の研究所に在籍しているのは、多分、日本で僕一人かもしれないです。都市計画とか地域づくり、これを本来の専門にしております。都市計画にしろ地域づくりにしろ、総合的に地域を考えていく。ですから、要素技術で縦割り的に考えるのではなくて、都市とか地域を俯瞰的に眺めながら、ある意味それらをシステムとして捉えて、なおかつソフトもハードも視野に入れながら、最適な形というものを日々考えているところです。  国の省庁関係は、福和先生と同じように、内閣府防災とか、それから強靱化、あと国交省、環境省などの委員会に入れさせていただいて、日々議論をさせていただいております。  今日は、四つの話をしたいと思います。  一つが、事前の防災、減災から復興までをトータルに考えた上で戦略を考えていくべし。それから二つ目が、災害関連死に見られるように、急性期を今乗り切れていない状況ですので、それを乗り切るためにどうしたらいいのか。そして三番目ですが、南海トラフの巨大地震の被害想定が出ました、その超大規模災害にどう備えていくのか、この戦略づくりをある意味新たに発明していく必要があるんだという話です。そして最後、四番目が、どうしても、過去の日本社会を振り返ると、災害を経験して、その後追いをしている、そうではなくて、次の災害に向けては是非先取りをしていくべきだ。この四つの話をしたいと思います。  それでは、ページをめくっていただきたいと思います。  これは、災害発生から急性期、復旧復興期までを模式的に表したものになります。デフォルトは一番ボトムのラインです。災害が発生して機能が低下し、急性期においては更に被害が拡大する。災害関連死もこの間に多く発生していく。そして、今、向こう二十年で人口が半減するところは珍しくないという状況の中では、もはや復興ができないというのがデフォルトの状態だと捉えるべきだと思います。  今の構造的な大きな問題は二つあります。一つは、急性期において被害が拡大して、災害関連死を含めた様々な苦難が生じるということ。そしてもう一つが、復興できない状況に陥ってしまう。この二つを何としてでも避けなければいけない。  そのためには三本柱が必要だ。一つ目が、急性期を上手に乗り切って復興可能なレベルになるように事前に被害を減らしておくという対策です。それから二つ目が、急性期を乗り切る方策。そして最後が、適切かつ円滑かつ速やかに復興できる状態をつくっていくということです。  被害が減れば、緑の下の、右肩下がりの点線のラインに乗っかる。急性期を乗り切れる対策をすることで水平のラインになる。ここから復興なんですけれども、右肩上がりの赤線のラインに乗っかるんですけれども、その途中でボトルネック、障害があって、それにひっかかって、また復興できないというラインに乗っかってしまう。ですから、この障害を取り除く必要があるということです。加えて、復旧復興の加速化、円滑化ということで、緑のラインに乗っけていく。  ここで重要なのが、復興像として何を目指すのかといったときに、僕は先取り適応と呼んでいるんですけれども、元の右肩下がりの社会に戻しても、いずれまた右肩下がりになってしまう。要するに、時代を先取りして適応、つまり環境の変化に合わせて未来の姿も変えていく、そういう形の復興が必要だと思っています。  次、お願いします。  まず、事前に被害を減らしていくということなんですけれども、強靱化、防災、事前復興、いろいろな言葉があるわけなんですが、これに係る投資というのは、基本的には、明るい未来を開く投資であるべきだというふうに考えています。ですから、危ないからマイナスをゼロに近づけましょうというだけではなくて、むしろプラスをつくり出すことでマイナスもゼロに近づけていく、こういう考え方が必要だと思っています。  私自身は、防災もまちづくりという言葉を提唱しています。これは、反対語は防災だけです。むしろ、防災だけに焦点を当てることが、防災の持続性、推進力を乏しくさせていく。つまり、防災を主軸にしながらも、総合的によりよい地域をつくっていく。ですから、ほかの要素と組み合わせながら防災を進めていくということが、遠回りに見えて最も近道だというふうに思っています。  例えば、左下ですと、伊豆市土肥地区、観光防災まちづくり、観光も防災もと。昨年の七月に写真のような避難タワーができました。これは夕日が見える展望レストランつきの避難タワーです。ここは、三千数百人いて、毎年百人ずつ人口が減少している、三十年間津波が来なければ人的被害がゼロになるんじゃないか、そういう地域なわけですね。ですから、単に避難タワーを造るだけではなくて、交流人口を増やして観光振興を図りながら地域の持続性を高めていく、そういう形のものになっています。  右側は東京の海抜ゼロメートル地帯なんですけれども、河川が氾濫する、あるいは高潮被害に遭えば大変な状況になってしまう。危ないからといってその土地を使わないようにしていこうというと、寂れた町が延々続くことになってしまう。そうではなくて、積極的な投資を行って、浸水したとしても大丈夫な状態をつくっていく、その布石を今から打っていくんだと。これは国交省の高台まちづくりにつながっています。  次が、復興のところに入ります。  まず、復旧復興の障害の除去ということで、これは徳島県の美波町の事例ですけれども、ここは津波でほぼ可住地域が浸水してしまう。復興の障害は、応急仮設住宅用地を確保できないというのが障害になる。事前にこの町では、山を開いて防災公園を造る、いざとなればここに応急仮設住宅用地を確保することで人口の流出を止めていこうと。こういった取組、まだ一例しかありませんけれども、ほかでもやれる余地があるというふうに思っています。  それから、下の、先ほどの先取り適応ということなんですけれども、復興まちづくりのビジョン、どういう姿を目指していくのかということを事前に考えていく必要があるだろう。この先二十年で半減、もしかすると、被災するともっと減るかもしれないという中で、例えば、将来の縮小に見合ったインフラ像の検討などもしていくことが非常に重要かと思います。  右側を見ていただくと、これは常磐炭鉱の例なんですけれども、かつて、石炭から石油へということでエネルギー革命が起こりました。これはいわばゆっくりとした災害に直面していたとも言えるわけです。こういった中で、常磐炭鉱は、常磐ハワイアンセンター、スパリゾートハワイアンズというものを開業して、都市の特性をがらっと変えていった。  つまり、先取り適応の適応という言葉の中の変わるということが、やはり復興において非常に重要になってくるであろう。翻って日本全国見渡してみると、向こう二十年で人口が半減になるようなところも珍しくない。言ってみれば、今現在、地方の過疎地域においては災害に直面している、そういう見方もできるということです。  次が、急性期を乗り切るためにどうしたらいいのかということです。  急性期の根幹的な問題は何かというと、この写真を御覧ください。この写真は、災害時の避難所の写真ではなくて、娘が小学校六年生のときの運動会のお昼御飯の様子なんですね。実は、この日は非常に日差しの強い日で、運動場で御飯を食べ始めたら、結構暑かったんです。暑かったので、体育館でやはり食べようかと出遅れて行ったらこの状態です。つまり、学校の体育館に小学校の六、七割ぐらいの家庭が入るとこんな状態になるわけです。つまり、災害時に必要とされる対応ニーズに対して、対応資源、リソースが極めて少ない、このアンバランスが急性期の根幹的な問題になっているということです。  例えば、東京消防庁の救急車、約三百五十台ぐらいあるそうです。一人当たり二時間、病院に運ぶのにかかる。そうすると、発災十二時間で搬送可能人数というのは二千人前後ぐらいなんですね。一方で、東京都の地震被害想定を見れば、負傷者は九万人。これは頑張ればできるというギャップではないわけですね。  ですから、何をしなければいけないかというと、災害時にできる限り自立していこうという生活圏域を全国でつくっていくということが非常に重要だというふうに思っています。こういう努力を全ての地域が行えば、なけなしの公の資源を本当に必要なところに投入できるということになります。それをするためには、需要を減らして資源を増やすということが必須になってくるということです。  次、おめくりください。  需要に関しては、需要のダイエットあるいは省需要ということが必要である。これをするためには、自助ができる人の自助を強化する、共助を強化していく。一方で公については、弱者救済、弱者に対して丁寧に支援をしていく。つまり、不要不急の需要をできる限り抑制していくということが必要かと思っています。あわせて、災害時のシビルミニマムをきちんと設定して、それに対して社会的な合意を図っていくということが重要だというふうに思っています。  次に、対応資源の最大化ということです。リソースが、今、公だけでは全く足りない状態である、桁外れに少ない状態である。一方、全国見渡せば、民間にはたくさんのリソースがある。ですから、できる限り民間リソースを活用していく必要があるだろう。ただ、国が協力しなさいと言う話ではなくて、むしろ企業側が内発的かつ本業を生かした支援をやりたくなるような、そういう環境をつくっていくことが非常に重要だと思っています。  そして、被災地内においては、これは災害時遊休施設と私は呼んでいるんですが、災害時に本来目的で使わなくてもいい民間施設というのが、実は、探せばいろいろ、たくさんあるわけですね。そういったものを徹底して活用していくということです。  次に、現状の対応の効率化を図っていく必要があるだろうというふうに思っています。  最後、地域の機能の事前拡充ということで、あらかじめ地域内の機能を高めていくことで需要を減らしていくという考え方になります。  ページをめくっていただきたいと思います。  今、南海トラフ巨大地震、首都直下地震のリスクに直面しているわけですけれども、想定される超大規模災害の被害量というのは、能登半島の地震と比べると、一桁、二桁、三桁、それぐらい違うわけですね。ですから、全く違うモードの対応が必要だというふうに思っております。これもある種の発明が必要だというふうに思っています。  支援のニーズに対して、全国の支援能力をかき集めたとしても、やはり桁外れに支援能力が小さくなってしまう。そうすると、ある種の地域のトリアージ、どうしても助けに行けない場所というのが必ず出てくるというふうに思っています。ですから、トリアージによって支援が困難とされた地域に対しては、これは切り捨てるという話ではなくて、事前に、重点的に事前投資を図っていく。要するに、仮に孤立したとしてもきちんと自立できるような仕掛けを地域の中にあらかじめつくっていく、こういった方向性の検討も必要だというふうに思っております。  そして、最後です。  経験の後追いではなくて、先取り。未知、未経験の状況というものが次に控えていますので、それをきちんと想定して備えていくということが必要だし、あとは、公助の力をいま一度、客観的、冷静に評価をしてみる。頑張ればできる状態でもなさそうな気がしますので、そこは客観的、冷静にいま一度見詰め直した上で、違うモードを発明していく必要があるというふうに思います。  以上です。ありがとうございました。(拍手)

加藤孝明 の他の発言

2025-05-22 · 衆議院東日本大震災復興・防災・災害対策に関する特別委員会
○加藤参考人 それは是非、先駆的な事例をこれからつくっていくべきだと思います。  やはりその中で重要なのは、地域の人たちの問題意識を十二分に高めて、地域の担い手と一緒になって取り…
2025-05-22 · 衆議院東日本大震災復興・防災・災害対策に関する特別委員会
○加藤参考人 バランスというよりかは、基本的には自助、共助、公助、最大限の努力をしていくというのがまず大前提である。  まず、やってはいけないこととして、やはり相互依存関係がある…
2025-05-22 · 衆議院東日本大震災復興・防災・災害対策に関する特別委員会
○加藤参考人 おっしゃるとおりだと基本的に思いました。  その中で、公助の現場での伸び代をいかにつくっていくのかというのが僕は非常に重要だと思っています。  端的に言えば現場力…
2025-05-22 · 衆議院東日本大震災復興・防災・災害対策に関する特別委員会
○加藤参考人 基本的には地域特性に応じてということだと思います。  ただ、南海トラフ地震をにらむと、共通の課題として、まさに地方創生、過疎化への対策と考えると、やはり交流人口を増…
2025-05-22 · 衆議院東日本大震災復興・防災・災害対策に関する特別委員会
○加藤参考人 一つ目が、やはり支援の目的というか理念をどう考えるか。  災害、そして復興には社会階層性というのがあると言われていて、災害の被害の受け方についても、あと再建に関して…
2025-05-22 · 衆議院東日本大震災復興・防災・災害対策に関する特別委員会
○加藤参考人 三点挙げたいと思います。  一つ目が、今、防災に関しては役割分担がかなりきちんとできていますので、ある意味、部分最適はかなりきちんとできるようになっている。ところが…
2025-05-22 · 衆議院東日本大震災復興・防災・災害対策に関する特別委員会
○加藤参考人 事前復興の取組は徐々に進みつつある段階で、まだ全ての自治体が取り組んでいるという状況にはないというふうに思っています。  その理由は、特に中規模、小規模な自治体にお…
2025-05-09 · 参議院災害対策特別委員会
○参考人(加藤孝明君) よろしくお願いいたします。東京大学の加藤と申します。  今、私、生産技術研究所って理科系の研究所とそれから社会科学研究所という文科系の研究所、両方に所属し…

API / MCP 利用

国立国会図書館 国会会議録 API を構造化

REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=加藤孝明
MCP: search_diet_speeches(speaker="加藤孝明")