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山口真一 ·国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授

衆議院総務委員会(2024-04-16)での発言

第213回国会 ·第第14号号 ·6,004字
○山口参考人 皆さん、おはようございます。ただいま御紹介いただきました国際大学の山口と申します。  この度は、大変貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。  では、お手元の資料、こちらを御覧いただければ幸いです。  まず二ページ目、簡単に自己紹介をさせていただきます。私は経済学博士でして、特に専門は計量経済学というデータ分析手法の一種です。私はその手法を使って、SNS上のフェイクニュース、誹謗中傷、ネット炎上といった諸課題について実証研究を主にしております。今日の関連するところで申しますと、総務省のデジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会などで構成員を務めさせていただいております。私は法律が専門ではございませんが、そういった実証研究を専門としている立場からお話をさせていただければ幸いです。  では、ページをめくっていただきまして、三ページ目、まずは現在のインターネット上の誹謗中傷の現状についてお話をしたいと思います。  以前、下の方に参考文献が載っておりますが、二〇二三年に誹謗中傷に関する大規模調査結果というものを公表しております。そのときは、脅迫・恐喝や侮辱・攻撃などなどの九つの誹謗中傷に関しまして、それぞれどれぐらいの人がSNSなどのネットサービスで過去一年以内にダイレクトメッセージやリプライという直接分かる形でされたことがあるかといったことを調査いたしました。  その結果が左側の図一ですね。一番下のオレンジ色の部分がいずれか一つ以上経験したことのある人の割合なんですけれども、四・七%ということで、大体二十一人に一人ぐらいは既に過去一年間で経験があるということが言えます。しかも、それを性、年代別に見たものが真ん中の図二となります、こちらは御覧いただければ分かるとおり、若い世代ほど誹謗中傷被害に遭っているんですね。ですから、これはもちろんインターネット上の問題なわけですけれども、同時に青少年のインターネット利用における課題ということも言えるかなと思います。  さらに、総務省のプラットフォームサービスに関する研究会の第三次取りまとめでは、図三のようなグラフが引用されていると思います。他人を傷つけるような投稿、誹謗中傷、されたことがある人というものが一八・三%というふうになっております。  結構違いが出ておりますが、もちろん対象としたサンプルの違い、あるいは直接の攻撃に絞っているかどうかなどが影響していると思いますが、いずれにせよ、少なくない方がインターネットを利用して誹謗中傷の被害に遭ってしまっているということは否定できない事実としてあるかなというふうに思います。  では、次のページ、四ページ目に参ります。こういった被害が出ている誹謗中傷に関しまして、どのような社会的影響があるでしょうか。  まず、あるケースでは、図四で示しているんですけれども、ある方がネット上で誹謗中傷を大量に受けた、それこそ開示請求して、裁判を起こした結果分かったのが、被告の男性が二百以上のSNSアカウントを使ってこの方に攻撃していたということなんですね。このように、大量のアカウントを使って大量に攻撃する、こういったこともインターネット上では起こっております。  また、皆さんも御存じのとおり、インターネット上で誹謗中傷を受けて、それを一因として自ら命を絶ってしまうような事例というものも国内外で発生しております。こういった誹謗中傷の恐ろしいところは、一つ一つももちろんつらいメッセージなわけですが、それが大量に来るということ、これが非常に大きな特徴かなというふうに思います。  このように、精神的な負荷とか、あるいは命を絶つということだけではございません。誹謗中傷が原因で表現の萎縮が起こっているということも明らかになっております。  例えば、図五、こちらは、同じく私が二〇二三年に発表したジャーナリストへの誹謗中傷の調査結果です。御覧いただければ分かるとおり、過去一年以内にジャーナリストのSNSアカウントで誹謗中傷を受けた経験というもの、こちらは何と二〇%を超えていて二一・五%なんですね。先ほど、同じ調査の四・七%という生活者調査がございました。これと比較しても非常に高い割合であるということが言えます。  その上で、では誹謗中傷を受けた後にどのような業務への影響があったかといったものを調査したのが図六です。済みません、文字が小さくて申し訳ございませんが、この中では、同様のコンテンツや近しいコンテンツに関しての記事を書くのをやめた、二〇・九%、調査の方法や書く記事の内容を変化させた、一一・六%、新しい仕事を探し始めた、二・三%など、極めて表現の萎縮が起こってしまっているということが言えます。  こういったことは恐らく生活者でも起こっているというふうに考えられます。つまり、誹謗中傷が怖くてSNS上で政治の話がしにくいとか、ジェンダーの話がしにくいとか、そういった様々な社会的なイシューについて、重要なイシューほどネット上では投稿しにくい、なぜかというとどこからともなく誰かに攻撃されるかもしれない、こういった表現の萎縮が恐らく起こってしまっている。  つまり、誰もが自由に発信できる時代が来ています。SNSが普及して、誰もが自由に世界に情報発信できる、これを私は人類総メディア時代というように呼んでおりますが、この人類総メディア時代が来たことによって、その発信が逆に表現の萎縮を引き起こしてしまっているわけですね。これはつまり、議論を前提とした民主主義というものそのものに対しても悪影響を与えているのではないかということが言えるわけです。  では、次のページに参りまして、五ページ目となります。こういった中で、では現在の課題として何があるかというところです。  まず、前提として、多くのSNSサービスにおいては、ブロックとかミュートといったような身を守る手段というものはほとんど用意されております。しかしながら、いざ、例えば投稿内容を削除したい、あるいは法的手段を取りたい、こういったときに、加害者の手間に比較して被害者が対応するコストが余りにも高いわけですよね。加害者は非常に気楽に誹謗中傷します。しかしながら、被害者はなかなか申出とか情報開示請求ということができていないということなわけです。  図七は調査結果なんですけれども、誹謗中傷された後にどのような対応をしたかという結果です。ブロックやミュートで身を守っている人もそこそこいるんですけれども、一方で、下の枠、警察に通報した、五・七%、利用サービスの通報、報告機能を用いて通報した、九・二%ということで、警察に通報はおろかサービス内での通報とか報告ということもほとんどなされていないという現実があるわけです。  さらに、右側、違法・有害情報相談センターの件数の対応手段別の内訳というところを見ますと、削除方法を知りたいというものが圧倒的に多いわけですよね。やはりこのように、対応をどうすればいいのか、私は一体どうやってこれに対して行動を起こせばいいのか、ここに対して疑問を持っている人が非常に多いということが言えるわけです。  さらに、多くの場合、シェアを取っているものがグローバルプラットフォームであることが多いです。そのために、日本での対応とか対策とか透明性レベルというものに非常にばらつきがあります。特に、要請ベースで対応をお願いしているときには、日本の拠点がやりたいというふうに思ったとしても、本社の許可を得られるかどうかまた分からないわけですよね。なので、そういったことが対応のばらつきの一因となってしまっているのではないかということが言えるわけです。  他方で、こういった誹謗中傷問題、非常に大きな問題をはらんでいるわけですが、強い法規制をしいてしまいますと、表現の自由に悪影響を及ぼす懸念もある。そういった法律を悪用して、例えば、自分に批判的な人を、おまえは誹謗中傷を言っているというふうに言って捜査の対象とする、そういったようなリスクも世界中で懸念されているわけですね。ですから、バランスを取るということが極めて重要になるのかなというふうに考えております。  以上の現状を踏まえまして、次のページ、六ページ目に参ります。今回提出されております両法案に関しまして、ポイントと評価ということを書かせていただいております。  まず一つ目、大規模プラットフォーム事業者の選定を行い、その事業者のみに義務を課すというところですね。こういった法律、義務を新たに課すということによって、プラットフォーム事業者の運営コストは増大するでしょう。それが懸念される中で、大きな言論の場となっている大規模プラットフォーム事業者のみを対象としております。これによって中小事業者の負荷が増大して、むしろ健全な市場競争が阻害されるといったような現象を防ぐ工夫がなされているというふうに評価しております。  二点目、国内における迅速化規律と透明化規律をセットで導入しております。迅速化というところで申しますと、被害者の申出窓口を設定し公表するとともに、被害者から申出を受けた場合には迅速に必要な調査を行って結果に基づいて措置を講じる。また、透明化というところで申しますと、削除の実施基準を定め公表し、削除した場合に発信者に通知したり、削除の申出方法や開示請求方法を変え公表する、そしてさらに実施状況を公表するということが義務化されております。こういったことで、まず申出方法などをユーザーに分かりやすく伝えることで、被害者はより簡便に申出や発信者情報開示請求を行うことができるようになるというふうに考えております。  また、現在、先ほども申し上げたとおり、被害者負担は非常に大きいです。そういった意味でも迅速化ということは欠かせないわけです。ただし、プラットフォーム事業者のコンテンツモデレーションのプロセスは複雑です。今回の迅速化規律がどのようにプラットフォーム事業者の対応あるいは言論の空間といったものに作用するかということを検証すること、これは極めて重要です、プラットフォーム事業者が恣意的に何かやっていないかということですね。その点において、プラットフォーム事業者の恣意性を排除するという意味でも、透明化と迅速化、これが両輪であることに意義があるというふうに考えております。ですので、総じて、権利侵害問題への対応を強化し、より高い透明性と責任を求める点で肯定的に評価できると言えます。  三番目です。侵害情報調査専門員を配置するということで、日本語対応ということだけではなくて、特に差別的表現とか風刺とかいろいろあるわけですけれども、そういったものは、日本の文化を知るということは極めて重要なわけですね、文化を踏まえた上で対応する。ですから、この専門員の配置及びその状況の公表というものは大変意義があるというふうに評価しております。  最後となりますが、次のページ、七ページ目です。今後の課題について述べさせていただきます。  まず一つ目、オーバーブロッキングの可能性及び委員会による定期的な審査などの重要性ということで、そもそも本法案は、迅速化と透明化に焦点を絞っておりまして、表現の自由と被害者保護、救済のバランスを非常によく取っているというふうに考えておりますが、迅速化規律とか罰則の規定などによって、オーバーブロッキング、つまりプラットフォーム事業者が罰則を避けるために迅速に対応しなきゃというふうに焦って過剰に削除してしまう、こういったことが世界中で、そういった問題は起こらないのかということが様々な法律に対して指摘されているわけなんですけれども、そういった可能性が本法案でもゼロではないのかなというふうに考えております。  また、スラップ訴訟という問題がございますが、同じように、手当たり次第に申出をしてアカウントを停止させようとか、そういったような動きが活発になる懸念もゼロではないのかなというふうに考えております。  こういったことを踏まえまして、客観的で恒常的な委員会による定期的な審査などで法律の効果を継続的に確認していくことが重要であるというふうに考えております。その審査結果を受けて、エビデンスベースで随時改正を検討していくことが望ましいです。  二つ目、誹謗中傷被害の実態調査の継続ということで、誹謗中傷の被害の経験とか、実際にこの法案の導入前後で開示請求や申出を行った経験がどのように変化したかとか、そういったような継続的な調査を実施して、実態を把握し続けるということが重要であるというふうに考えておりますし、これは法律の効果の計測ということにもつながると思います。  三番目、具体的な透明性項目の定義ということで、大枠の定められた透明性ということ、今回、法案に入っております。しかしながら、より具体的な項目とか公開の方法の定義をどんどん進めていく必要があるかなというふうに思います。  事業者に負担をかけるということになりますので、どういった社会を目指して、そして透明化された情報を基にどのような分析や施策を行うかということを具体的に提示し、それを基に各事業者が真摯にやっていくべきだろうというふうに考えております。  四番目、プラットフォーム事業者の責任の範囲はどの程度かというところでして、法案を読ませていただいておりますと、発信者情報開示請求に関する手順というところの公表という話がありました。この手順の認知度は極めて低いです。ですから、被害者が開示請求をするハードルの一つとなっていること、これはもう間違いございません。私も危機的な意識を持っております。  他方で、開示請求を円滑に行うための必要な情報の公表までをプラットフォーム事業者がするべきかどうか、これには議論の余地があるかなというふうに考えております。例えば、分かりやすく開示請求をする方法をまとめたページをどこかに用意して、そこにリンクで誘導してくださいみたいな、そういった解釈も可能になっているといいのかなと。つまり、例えば新型コロナウイルスに関しましては、プラットフォーム事業者は厚生労働省のウェブサイトとかにリンクを飛ばしてくれたわけですね。こういったように、別のウェブサイトに飛ばす、そういった方式もあり得るのかなというふうに考えている次第です。  私からは以上となります。ありがとうございました。(拍手)

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