○参考人(足立泰美君) 本日は、参議院国土交通委員会におきまして意見を申し述べる機会を承りましたこと、本当に改めてお礼申し上げます。
私は財政を専門としておりまして、これまで上下水道を始めとする地方公営企業の経営や財政運営について研究してまいりました。本日は、その立場から下水道法等の一部を改正する法律案について意見を申し述べます。
まず、結論から申し上げます。
まず、皆さんのお手元の資料、一ページめくってください。
今回の法改正は、下水道事業を取り巻く環境変化を踏まえた重要な制度改正であり、その方向性は高く評価しております。とりわけ、施設の整備拡大を中心とした時代から、安全で持続可能な下水道サービスを将来にわたり提供する時代への転換を示した点に大きな意義があると考えております。
二ページ目めくってください。
もっとも、制度を整備をするだけでその目的が実現するわけではございません。法改正の成果を着実なものとするためには、それを担う地方公共団体の経営基盤と財政基盤を強化するとともに、実効あるガバナンスを構築することが重要です。
以下、今回の法改正の意義を確認した上で、その成果を確かなものとするために必要な財政、経営上の課題の方向性について申し上げていきたいと思います。
まず、我が国の下水道事業は、現在大きな転換点を迎えています。高度経済成長期以降に整備された施設が一斉に更新時期を迎える一方、人口減少によって使用料収入の大幅な増加は期待しにくく、地方公共団体の経営環境は厳しさを増しています。さらに、自然災害への備え、技術職員の不足にも対応しなければなりません。
その点で、今回の法改正では、管渠の診断基準の法制化、維持管理状況の公表、計画的な改築と収支の見通し、道路管理者との連携、広域的なマネジメントに加え、下水道区域の見直しや、また汚水処理方式の転換など、持続可能な事業運営に向けた制度の整備が進められています。
私は、この法改正の本質は、事後、発生後に対応する事後保全から、点検、診断と計画的な改築による予防保全への転換した点にあると考えています。また、道路管理者、地方公共団体及び民間事業者など多様な主体の連携によって、下水道サービスを支える新たなガバナンスの方向性が示されたことにも大きな意義があります。
人口減少、縮退社会におきましても法改正を着実に機能させるには、新たな維持管理やマネジメントの責務に見合う地方財政計画や地方交付税措置など、財政基盤の整備が不可欠です。制度と財政基盤が相まって初めて法改正の実効性が確保されるものと考えております。
皆様のお手元の資料、三ページ目の方行ってください。
したがいまして、地方財政の観点から申し上げれば、法改正の実効性を左右する鍵は、五つの財源を適切に組み合わせることにあります。
まず第一は、国庫補助金です。人口減少地域や財政力が弱い自治体におきましては、必要な下水道サービスを維持できるようしていく必要があります。そのためには、耐震化、浸水対策、重要施設の更新、広域連携、群マネジメント、デジタル技術の導入など、公益性、政策性の高い事業につきましては、国による重点的な支援が求められます。
第二は、使用料です。使用料は、受益者負担の原則に基づき、日常的な維持管理を支える基本財源です。将来の更新需要や経営状況を住民と共有し、中長期の財政見通しに基づく計画的な見直しが必要です。
第三は、一般会計繰入れです。雨水公費、汚水私費の原則に基づき、雨水対策など公益性の高い事業は、一般会計が適切な役割を果たす必要がございます。政策的、公益的な経費についても、一般会計と下水道事業会計との役割を明確にすることが重要です。
第四は、地方交付税です。地方交付税につきましては、人口減少地域や財政力が弱い自治体におきましても必要な下水道サービスを維持できるための地域間の財政力格差を調整する役割を担います。また、法改正に伴う新たな責務を着実に実施できるよう、地方財政計画及び地方交付税措置へ適切に反映することが重要になります。
そして最後、第五は、企業債です。更新投資の便益は将来世代にも及ぶため、企業債は世代間負担の公平を支える重要な財源です。今後は、金利のある経済を見据え、償還計画と中長期の金利動向を踏まえて戦略的に活用する必要がございます。
この五つの財源は、それぞれ異なる機能を担います。重要なのは、地域の人口動態、更新需要、財政力に応じて最適に組み合わせることです。ただし、財源の組合せだけでは十分ではございません。投資判断、料金設定、広域連携へと結び付ける経営の仕組みが必要になります。
そこで次に、法改正の実効性を支える五つの経営ガバナンスについて申し上げたいと思います。
次のページめくってください。
まず第一に、統合アセットガバナンスの確立です。今回の法改正では、下水道マネジメントの強化が柱とされています。しかし、老朽化や更新需要を把握するだけでは十分ではございません。診断結果を投資計画、財政計画に反映し、更新需要の平準化、財源配分、PPP導入を含む経営判断へと一体的につなげることが重要です。アセットマネジメントの本質は、資産を管理することではなく、限られた財源をどの資産に優先配分するかという意思決定です。すなわち、統合アセットガバナンスにあります。
第二は、財源ポートフォリオガバナンスの確立です。五つの財源は、支出の性質や地域の実情に応じて中長期に管理する必要がございます。特に企業債は、世代間負担の公平、金利動向、償還計画、将来の更新需要を一体的に捉え、将来世代に過度な負担を残さない運用が重要です。また、国庫補助金や地方交付税は、重要管路、災害リスク、公益的影響を踏まえ、重点的に配分すべきです。こうした財源構成を継続的に見直す仕組みが財源ポートフォリオのガバナンスになります。
第三は、料金ガバナンスの確立です。使用料は受益者負担に基づく基本財源である一方、その改定は、議会の議決を伴う政治的、民主的な意思決定です。必要な料金水準と受容可能な水準が乖離すれば、改定が先送りされ、更新財源の不足、事故リスク、将来負担、増税を招きます。したがって、料金改定をその都度の政治判断に委ねず、説明責任、住民理解、議会との合意形成を備えた料金ガバナンスが必要です。
第四は、広域・契約ガバナンスの確立です。人口減少、技術職員不足に対応するには、広域連携、DX、PPPの活用が不可欠です。しかし、重要なのは導入ではなく統治です。広域連携では、調整主体、更新順位、費用分担を明確にしなければなりません。中心自治体のみが調整コストを負担し、参加自治体が便益を享受する構造では、フリーライドが生じます。そのため、調整機能を制度的に評価する必要がございます。また、PPPを導入しても、最終責任は地方公共団体に残ります。広域化、官民連携が進むほど、自治体には高度な契約管理、監督能力が求められます。したがって、広域調整と契約管理を一体的に担う広域・契約ガバナンスの確立も不可欠です。
最後、第五に、政府間ガバナンスの確立です。今回の法改正の実効性を高めるには、国、都道府県、市町村の役割、権限、財源を整合的に設計することが重要です。国は、制度設計、政策誘導及び財政面での支援を、都道府県は、流域下水道の管理に加え、広域連携の調整、技術支援及び人材育成を、市町村は、施設管理、経営判断及び住民サービスの提供になります。各政府がそれぞれの役割と責任を果たしながら相互に連携する仕組みを政府間ガバナンスとして確立することが重要です。
以上の五つの経営ガバナンスは相互に関連しており、資産、財源、料金、広域、官民連携及び政府間の役割分担を一体的に運営して初めて法改正の実効性が確保されるものと考えます。
最後のページになります。
今回の法改正は、予防保全の転換と持続可能な下水道サービスの実現に向けて重要な第一歩であり、その方向性を高く評価しております。その成果を確かなものにするには、診断結果を更新投資と財政運営へ確実に結び付けることが不可欠です。その基盤となるのが、五つの財源による財源ポートフォリオと、それを支える五つの経営ガバナンスです。今回の法改正を契機として、制度、財政、経営が一体となった持続可能な下水道経営の基盤が構築されることを期待しております。
以上で私の意見とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。
足立泰美 の他の発言
2026-07-14 · 参議院国土交通委員会
○参考人(足立泰美君) ありがとうございます。予防保全を進めていくにはどういう財源負担かという、その話の御質問かと思います。
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2026-07-14 · 参議院国土交通委員会
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2026-07-14 · 参議院国土交通委員会
○参考人(足立泰美君) 御質問ありがとうございます。
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2026-07-14 · 参議院国土交通委員会
○参考人(足立泰美君) 今、官民連携ということで、いわゆる官民連携につきましては、民間の参入障壁と市場形成との方向性、これが問題になります。
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2026-07-14 · 参議院国土交通委員会
○参考人(足立泰美君) 今、じゃ、私は、それに加えまして、財政の視点でお話を補足していきたいと思います。
今回の法改正では、道路管理者との連携に加えて、広域連携、PPP、維持管…
2026-07-14 · 参議院国土交通委員会
○参考人(足立泰美君) 今、実際に事故ですね、事故につきまして、実際に道路と下水道、下水道というのはやはり埋設されておりますので、実際にどういう状況なのか把握するのはなかなか難しい…
2026-07-14 · 参議院国土交通委員会
○参考人(足立泰美君) ありがとうございます。今のお話、本当にすごくその点が重要かと思います。
ただ一方、地方創生という言葉がございました。今回の論点が少し変わってくるかと思う…
2026-07-14 · 参議院国土交通委員会
○参考人(足立泰美君) ありがとうございます。優先順位、どの制度改正をするのかという話かと思います。
実際、制度改正、例えば広域連携やPPP、デジタルという話あったかと思います…
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REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=足立泰美
MCP: search_diet_speeches(speaker="足立泰美")